解散のごあいさつ

 大阪肢体不自由児サービスグループ(以下「SG」)は、1965年(昭和40年)秋に、純民間のボランティア団体として設立しましたから、その活動は既に半世紀を超えました。外から見れば、不思議な団体と写るようです。全員が手弁当で参加し、何の見返りも求めず、多くの時間を障害児者のために汗をかく、そうした活動が50年以上も続くなんて信じられないそうです。

 でも、気がつけば、いつの間にか…というところでしょうか。この間、SGに関わった方々は数えきれません。キャンパーからグループ員になった方、友達から誘われて軽い気持で参加した方、キャンプ・リーダー募集のチラシを見て入った方など、動機は様々ですが、数えてみれば、グループ員歴通算20年を超す者が大勢おられ、年齢層も若者から高齢者まで千差万別です。

 

 50年ほど前、障害児、特に重度の障害児が置かれていた状況は、今とは大きく違っています。自立歩行に必要な機能訓練を受ける機会もなく、学校に通うことすら拒否され、将来の展望は開けませんでした。街中に出れば周りから奇異な眼差しを向けられ、外出を躊躇し家の中に閉じこもっていました。

 『こんなことはおかしいんとちゃうか』と、学生を中心とした若者約10人ほどが集まり、何の成算もなくグループを立ち上げました。お金も集まる場所もない、公的な団体の後ろ盾もない、あるのは、若さと意欲と行動力だけ。でも、キャンプで出会った子どもたちが『また来年も来るからね…!』という言葉に背中を押され、一年一年積み重ね今に至りました。

 設立後、グループ員も徐々に増え、SGの中心的役割を受け継いだ歴代の仲間たちは、それぞれの人生のかなりの部分をSGに費やしています。多くは学生ですから、授業以外の時間はSG、というのが生活リズムです。大学・ 短大・専門学校の卒業とともにグループを去る方も多くいますが、卒業後もSGに留まり、合間を見つけて活動に顔を出したり、休暇を取って参加してくれる方が大勢います。

 この一種独特なSGの魅力は、障害児者問題という重い課題にも拘わらず、それほど深刻にならず、肢体不自由児と一緒になって楽しんでしまうところにありそうです。何処からも拘束されず、その時々に合った活動を皆で決め、全てを自らの手で実施するという自由さがもたらしたものに他なりません。

 

 しかしながら、半世紀を経て、SG活動が大きな転機を迎えています。障害者に対する法制度等が順次整備され、全ての障害児が学校に通えるようになり、生活支援制度も不十分とは言え、拡充されてきました。また、世間の障害児者に対する差別・偏見も薄れています。 

 ただ残念なことに、SGは、こうした障害児者を取り巻く環境の変化に十分対応しきれなかったと言えます。活動の継続に力点が置かれ、現在の障害児者や保護者は何を求め、必要としているのか、民間ボランティア団体としてのSGは何ができるか等の検証がおろそかになっています。

 しかも、SG活動を担う若者の意識の変化を十分認識しきれませんでした。指示があれば動くが、自ら責任は取りたくないとする今日の風潮の中では、自主的に社会的な活動に献身する若者の出現を期待するのは無理そうです。こうした背景から、ここ数年、SG委員会を担う若者が減少しており、グループの組織体制が機能不全に陥り、活動そのものが大きく停滞してきました。

 

 SGは、創設以来、常に『社会的連帯責任』という理念を掲げ、組織体として活動してきました。しかし、今や組織的な活動を展開する体制が取れず、再建の目処も立っていません。このままでは対外的に責任ある活動を全うすることができません。一抹の寂しさはありますが、歴史の長さに安住することなく、一旦この辺りで従来型の活動に幕を下ろす時期がきたものと判断します。同時に、SG活動を後方からサポートするため、OBやOGが中心となって結成した「SG後援会『かたつむり21』」についても解散することといたしました。

 

 もちろん、今日の障害児者の置かれている状況には、まだまだ多くの課題が残っています。何か役立ちたいと真剣に考える若者も多数いるはずです。この後は、縁あってSGやかたつむり21に集まったメンバー一人ひとりが、それぞれ『障害児者とともに歩む』ため新たな行動を起こしてくれることを期待するばかりです。

 これまで長年にわたり、SGやかたつむり21の活動に対し皆さま方から頂戴しましたご支援、ご協力に心から感謝申し上げる次第です。

 

  2018年3月4日

                   (記念誌「はじめに」から)